年間第25主日(ルカ16:1-13)

「ごく小さな事に忠実な者は、大きな事にも忠実である。ごく小さな事に不忠実な者は、大きな事にも不忠実である。」(16・10)わたしたちは何に忠実を尽くすか試されています。今週、天に宝を積む事柄に忠実を尽くす生き方について考えることにしましょう。

わたしが主任司祭になって初めて赴任したのは西彼大島町の太田尾小教区でした。大島造船所という基幹産業があり、大島トマトも有名でした。隣の崎戸町ではダイヤソルトという会社が塩を作っていました。かつては炭鉱の島でしたが、炭鉱閉山後見事に生まれ変わりました。

赴任して間もないころ、わたしは外出しては司祭館に帰れなくなって迷子になっていました。同じ道を帰ってくるだけなのに、最後に教会に上がる道を通り過ぎてしまい、「ここはどこだ?」と、さんざん苦い思いをさせられたのです。

ある日、首回りにカラーを付ける司祭シャツを着て出かけ、例によって帰り道で迷い、教会にたどり着けなくなりました。まだ知り合いもいないし、同じ道をぐるぐる回るだけでどうしても戻れませんでした。峠に差し掛かり、車を降りて行先を書いた看板の前に立ち尽くしていると、一人のお父さんが声をかけてくれました。「どうかしましたか?」

「わたしは太田尾教会の神父なのですが、教会の入り口がわからないのです。」あとで分かるのですがそのお父さんは太田尾教会の信徒でした。本当はおかしくてたまらなかったのでしょうが、見知らぬ親切な人を演じてこう言ったのです。「すべての道は、百合岳に通じるのですよ。百合岳に行って全体を見渡してごらんなさい。」

言われるまま、島の中でいちばん高い百合岳に向かいました。全体を見渡して、ようやく地図が頭の中に収まりました。わたしが見落として教会に戻れなかった場所も、頂上から眺めると一目瞭然でした。迷子になって焦っていたので、全体が見えてなかったのです。

その時の経験は今も生きています。「すべての道は、一つの場所に通じる。」それが分かれば、道を間違えても目的地にたどり着けるはずです。いったん頂上に行けば、どこを間違ったのか自分で納得できるのです。そしてこの教訓は、人を真理へと導いてくれると思ったのです。

福音朗読に戻りましょう。ある金持ちの主人に重んじられていた不正な管理人は、主人から仕事を奪われようとしていました。彼は小作人が主人に払うべき分に、自分の分け前を上乗せして証文を作成していたようです。証文に油百バトスと書かれていても、管理人を通して実際に主人が受け取っていたのは五十バトスだったのでしょう。

同じように小麦を納める小作人の百コロスも、そのうちの二十コロスは管理人の取り分を上乗せしていた証文だったと思われます。本来の数字に書き直しても、主人は被害を受けないし、小作人には負担を軽くしてくれた情け深い主人であると思わせることに成功したのです。

管理人は、告げ口をする者の告発で解雇されます。それまでは「主人にお仕えする道」を悪用して、「懐を増やす道」にすり替えていたのです。しかし解雇されるに至り、「すべての道を主人に向ける」この決断をしたのです。管理人が生き残る道は、そこにしかなかったのです。

「主人は、この不正な管理人の抜け目のないやり方をほめた。」(16・8)管理人がたどり着いた生き残りの最後の方法は、わたしたちに何かを教えようとしています。わたしたちにとって、「すべての道は神に通じる道」なのです。

もしそうであるなら、どれだけ神に背を向けていても、最後の行き止まりのところで神と向き合うことになります。最後に神と向き合う人生の道ならば、なぜ最後まで背を向ける必要があるでしょうか。一刻も早く神のほうに向きなおって、歩き始めるべきです。

それぞれの人生ですから、それぞれの好きなように使って結構だと思います。ただし、どのような使い方にせよ、天に宝を積むように工夫することを強く勧めます。あなたの持ち物のうち、いくらかは神の為に使うなら、財産全体が本当に価値あるものとなるでしょう。

友達を作るとき、その人がわたしを思い出して天の父にとりなしてくださるような人を探すように勧めます。わたしが道をそれても、わたしのことを天の父に祈ってくれる友達がいるなら心強いはずです。

わたしの持ち物、わたしが大切にしている友とこれから付き合っていくとき、最終的にどこにつながっていくのかを考えましょう。「すべては神に通じる。」そう思ってあなたの持ち物、出会う友達と接しましょう。もし最終的に神につながらない持ち物、神に向かう友達でないならば、距離を置くこともできます。

わたしたちが大切にすべき相手、忠実を尽くすべき相手は、本当に価値あるものにつながる相手であるべきです。神につながっていく相手を大切にして、すべての道が神に通じるよう、生活全体を整えたいと思います。

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ちょっとひとやすみ
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▼広島カープの優勝で、続々と便りが来た。北海道から、芦屋から、浜串から、伊王島から、他にもいっぱいあるが、つながりを感じた。「七度舞う 季節はずれの 鯉のぼり」次は10月のクライマックスシリーズだ。
クライマックスシリーズの負け組だったので全く知らなかったが、セカンドステージ(つまり日本シリーズへの最後の挑戦権)は、リーグ優勝したチームのホームグランドで6戦するらしい。4勝すれば勝ち抜きなので当然6戦目まで行われない可能性もあるが、ホーム球場で戦うなら今年のカープは4敗もしないだろう。
▼この原稿を書いた前日、カープ阪神との一戦だった。甲子園球場すら赤く染めるカープ党は、中盤逆転されても慌てない。3対1でリードしていた試合を3対4とひっくり返されてから、風呂に入りに行った。「まあ、風呂上がった頃には再逆転してるだろう。」
▼案の定、9回の時点で6対4と再逆転し、おいしいビールにありつけた。過去のすべての記録を知るわけではないが、現時点で83勝、貯金36はカープを応援していて見たことも聞いたこともない。わたしならとっくに舞い上がって「しくじり先生」になっているところだ。
▼ところが緒方監督は「勝って兜の緒を締めよ。」昨日の阪神戦でもエラーで逆転されたことをずいぶん気にしていた。こんな監督だから、いくらファンが浮かれていてもきっといい夢を見させてくれるだろう。
▼いよいよそこまで来たが、相手はどこだ?ソフトバンクホークスでなければ10月27日に試合を観戦する可能性はほぼゼロに近い。10月25日から27日までたまたま福岡で研修を受けている。だから27日にソフトバンク日本シリーズ第5戦というシナリオであってほしいのだ。
▼10月27日の研修が終わって、飛行機で東京、電車で千葉?あるいは飛行機で札幌、ドーム?いやいや、どちらも無理だろう。だから、だから。ソフトバンクが上がってきてほしいのだ。

† 神に感謝 †