年間第33主日(マタイ25:14-30)

今日、中学生は堅信式です。今日堅信の秘跡を受ける中学生、去年堅信の秘跡を受けた中学3年生、来年堅信を受ける中学1年生に、今日の説教を届けたいと思います。

今週の福音朗読は、「タラントンのたとえ」でした。「タラントン」は、お金の単位です。だいたい5千万円だと思ってください。ですから、主人は自分の僕たちの能力に合わせて、2億5千万円、1億円、5千万円を預けて旅に出たことになります。

3人の僕たちのうち2人は、期待通りに預かったお金を活用しました。2億5千万円預かった人は、ほかに2億5千万円を儲けました。もしかしたら、ブランド物のバッグを海外から買い付けて、それをお店に並べて売って、お店が急成長したのかもしれません。

1億円預かった人も、どうやって儲けたかは書いていないけれども、ほかに1億円儲けました。こうして、主人の期待に十分応えた僕たちは、主人から「忠実な良い僕だ。よくやった。お前は少しのものに忠実であったから、多くのものを管理させよう。主人と一緒に喜んでくれ。」と褒められています。

ところが、5千万円預かった僕は、主人のことを恐ろしい人だと思っていました。預かったお金を減らしてしまったら、ひどく叱られるのではないか。結果を求める主人が怖い。そう考えてしまって、預かったお金を活用しようと思わずに、土の中に埋めて隠しておいたのです。

エスさまが話したのは、「たとえ話」です。たとえ話は、本当に考えてほしいことが別にあります。それは、「神さまはわたしたち人間に何かを預けて、活用してくれることを期待している」ということです。今回は、神さまの恵み、「秘跡」に当てはめてみたいと思います。

5タラントン預かった人とは、5つの秘跡を受けている人です。堅信組の皆さんは、7つの秘跡を学びました。それぞれ、洗礼・堅信・聖体・罪の赦し・病者の塗油・叙階・婚姻です。そのうち5つを選ぶとしたら、「洗礼・堅信・聖体・罪の赦し・婚姻」ということになるでしょう。中田神父の5タラントンは、「洗礼・堅信・聖体・罪の赦し・叙階」です。

5つの秘跡を預けてもらった人はだれでしょうか。それは、皆さんの両親です。中学生の皆さんは、堅信までは受けますが、婚姻の秘跡はまだ受けません。婚姻の秘跡まで受けた両親は、授けてもらった秘跡の恵みをフルに活用して、神さまに次のように報告します。「御主人様、5つの秘跡をお預けになりましたが、御覧ください。ほかに5つの秘跡を預かってくれる神の子をもうけました。」

中学生の皆さんはここまではいかなくても、「洗礼・堅信・聖体・罪の赦し」と、4つの秘跡の恵みを預かっている人です。4つも秘跡の恵みを預かったなら、同じく4つの秘跡の恵みを受けたいという中学生のお友達を探してくることができるはずです。簡単ではないと思いますが、神さまの恵みは、それを実現するのに十分な力を持っています。

特に、堅信の秘跡によって聖霊の7つの賜物をいただくのですから、秘跡の恵みを受けてみたいというお友達を探してくる十分な力が与えられています。恐れずに、友だちに秘跡の恵みを話しかけてください。

さて、最後は主人をがっかりさせた人のことです。1タラントン預かっている人とは、1つしか秘跡を受けていない人です。「1つしか秘跡を受けていない人」と言いましたが、最初に受ける1つめの秘跡は「洗礼」のことです。これは絶対に間違えないでください。洗礼をまず受けなければ、聖体もゆるしの秘跡も堅信も受けられません。

1タラントン預かった人は、預かったものが重い荷物と感じ、主人をがっかりさせました。もし、洗礼を受けた人が、わたしには重い荷物だと感じてしまったら、その人はミサに行って聖体も受けないでしょう。神さまと仲直りするゆるしの秘跡も受けないでしょう。おそらく、責任を引き受ける大人の仲間入りをする堅信の秘跡も受けないでしょう。それはちょうど、洗礼の秘跡を土の中に埋めて隠してしまうような態度です。

大事なのは、恵みをいただいた人の受け止め方です。恵みは、お金には換えられない価値があります。それを生活に生かそうとする人には何倍にも恵みが働いてくれますが、恵みを重荷に感じる人には、何年たっても恵みが膨らまないのです。ずっと土の中に埋めてしまっているうちに、恵みを膨らませる方法も分からなくなってしまうでしょう。

中学生の皆さんは、今いちばん堅信の秘跡に近い人たちです。堅信の秘跡を受けるまでに、洗礼・聖体・ゆるしの秘跡の3つを自分の中で膨らませてきました。堅信の秘跡を受けると、4つのタラントンを預かった人になります。もうほとんど、5つの秘跡を受けた両親に近づくのです。

だから、4つのタラントン、4つの秘跡を受けることを喜びとし、胸を張ってこれからの生活を送ってほしいと思います。堅信の秘跡は特に、聖霊の7つの賜物を注いでくださいます。「智恵・理解・判断・勇気・神さまを知る恵み・神さまを愛し、敬う心」この7つが、自分自身の問題解決にも働いてくれるし、友だちが抱えている問題解決にも、またもっと広く教会や社会が抱えている問題解決にも働いてくれます。そのことを楽しみにして、これからを過ごしてください。

中学生の皆さんが、祈りや黙想会の中で、「神さま、見てください。こんなに恵みが働いて、すばらしい生活を送れました。すてきな人生でした」と、自分の言葉で神さまに報告ができるようになることを祈っています。決して、「わたしはあなたの恵みを隠していました。いらないので返します」という態度を取らないでほしいです。これから、堅信の秘跡を含めた4つのタラントンで、すばらしい学生生活、社会人となれるように、中田神父は祈り続けます。

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ちょっとひとやすみ
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▼久しぶりに、何だか力んで説教を書いた。たいてい物事は、力むと良い結果を生まないものだが、どうしても今週の説教は、力を抜いてさらっと書くことができなかった。「手塩にかけた」とまでは言わなくても、ほぼ2年付き合って、面倒を見た中学生が、晴れて堅信の秘跡を受けるからだ。
▼自分の年齢が45になっているせいか、中学2年生は自分の子どものように見える。言うことを聞くときも、言うことを聞かないときも、どちらであっても可愛いものだ。きついことはさせたくはないが、あとで困らないように言うべきことはきっちり言ってあげたい。本当のご両親の心配が少し分かる瞬間である。
▼わたしが小学6年生の時、中学生の先輩たちが3学年同時に堅信を受けた。ものすごく大人に見えた。当時の主任司祭が、「聖霊の賜物で輝いているのが見えるぞ」と言ったが、当時小学6年生の時は見えなかった。今なら、きっと見えると思う。
▼説教を心を込めて語り掛けるように書いてみたのはいつ以来だろう。思い出せない。もちろんいつでも語り掛けてはいるのだが、親が子に語り掛ける、兄や姉が妹や弟に語り掛けるように書いたのは、しばらくぶりではないだろうか。
▼もしかしたら、語り掛けを聞いた当の本人たちはどこ吹く風かも知れない。心に残ってくれれば幸いだが、1年50回の説教のうちの1回に過ぎないかも知れない。それでも、送り出すわたしは精一杯の気持ちで送り出したい。一生に一度の、消えない印、消えない記憶の晴れ舞台に。

===-===-===-=== † 神に感謝 † ===-===-===-===-===